『………力がほしいか?………』



そう聞こえた気がする。

夢とか幻聴とかそういうのかもしれない。

けれど、

「……朝…」

その声で起きたことは間違いなかった。





【それいけ☆アリサちゃん SS】


第1回 「はじまりは突然になんだからっ!」


「それで、どうしたの?」

「んーそれだけだったわよ」

通学のバスに乗りながらの他愛のない会話。

いつからだったかよくわかんないけど私たちは同じバスに乗り合わせる事にしていた。

「そろそろなのはちゃん達が乗る頃だね」

「そうねそろそろ…あ、いた!」

なのはとフェイトの姿を確認。

私とすずかはいつもなぜかあいてるバスの最後尾に陣取って二人が乗るバス停を待つのだ。

二人が入ってきたのを見計らいいつも通りに「こっちだよ」って手を振る。

その後はいつものように他愛ない会話…のはずだった。

そもそも、今日は朝からおかしいことがあったと認識してなかったし、それがどういうことかもちんぷんかんぷん。

ただの夢だと思ってた。

なのはの言葉を聞くまでは。

「最近ね、”力”をくれるおじさんがいるらしいの☆」






「”力”をくれるおじさん…ねぇ」

すずかと二人の帰り道。

今日はなにやら集まりがあるらしく、魔法少女3人組はさっさといってしまった。

曰く、

「屋上からクロノくんに転送してもらうの☆」

だそうだ。

「アリサちゃん声真似にてるー」

「そう?ありがと」

てなわけではやてなんか出番のかけらもなく下校時間。

「どうもよくわからないらしいねー」

そう。

おっちゃんの目的はまったく不明。

なにをするわけでもなくただ”力がほしいか?”と聞いてくるだけ。

その質問に対しイエス、ノーを答えた人はまだいない…らしい。

ゆえにどうなるかはわからない。

「つまりは質問に答えちゃったら危険かもしれないってことねっ」

そういうとすずかは嬉しそうに、「うんっ」と言うのだった。

「でも会ってみたいわね…」

実を言うと今朝の事はなのは達には言ってない。

すずかがうっかり口を滑らせそうになったのですかさず口をふさいだ。

理由はなんとなく、ね。


ふと、顔を上げたら”はじまりの森”があった。

なのはとユーノがここで出会ったことからはじまった数々の出会い…。

私たちはこの森の事を”はじまりの森”と呼ぶことにした。

「ねえすずか、近道してかない?」

「うん、いいよ」

気持ちの良い笑顔で了承するすずか。

「じゃあどっちが先に森を抜けるか競争よ!よーい、どん!」

「え?アリサちゃん??まってよぉ〜〜」

誰が待つか。

卑怯とは言うなかれ。

スポーツ万能なすずかに勝つにはのハンデが必要だってこと。

ていうかこのくらいのハンデじゃ全然足りない。

私は無数の葉の影に隠れた道を駆け抜ける。

涼しい…。

季節は初夏…さわやかな風が気持ちいい。

と、ここで異変に気付く。

「あれ?すずか…?」

おかしい。

いつものすずかならすぐに追いついてくるはずなのに。

それに森も静かだ。

周りを見渡すがいつもの森と変わらないように思う。

「ようやく見つけたよ、お嬢ちゃん」

ビクッとした。

そりゃあ誰もが使う森だもの私たち以外の誰かがいてもおかしくない。

でも、今の声…。

「わたしの事……ですか?」

声があったほうに目を向ける。

そこには身長2メートルはあろうかという大男が立っていた。

左腕を前へ伸ばし鼻筋へ左手人差し指を合わせ右肩をあげ、そして右手をピーンと伸ばしたポーズで。

さすがの私も驚いた。こんなポーズ見たことがない。

なんというか…凄い。

「”力”がほしいか?」

「え?」

今朝と同じ質問。

私はなんとなく考えていた。

あの時、クリスマスのあの時。

なのはとフェイトは私を守ってくれた。

けど、守られてるだけは嫌だ。

フェイトはなのはを守ると言った。

私だってなのはを守りたい。

私があの子守ってフェイトも守って…すずかだってはやてだって!

みんなみんな守りたいって…、

「この世界を守りたいって思うものっ!!……………あ」

我ながら情けない声をだしたもんだ。

いつのまにか声に出していたらしい。

「ふむ……」

おっさんは何か考えているようだ。

「あ、今のは特に気にしないで下さい。お年頃なんで…」

なんていいわけだよ…。

「君は私の声を聴いてるし…どうやら君には”想い”があるようだね」

「…想……い……?」

「そうだよ。あとは”力”だけだ。私は探していたんだよ、君のような人を…女の子限定で」

なぜか最後の言葉は引っかかったがどうやらこの人は私みたいなかわいこちゃんを探していたようだ。

「これを…」

すっとおっさんは手を差し出してきた。

その手に握られているのは…宝石。

私はその宝石を受け取る。

「……これは?」

「君の”力”だ。この先コレが必ず必要になる。そう、名前は…」

顔を上げたときおじさんの姿はなかった。

しかし……、私はこの宝石の名前を知っていた。

「……ダイヤモンド…ハート……」




続く



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