あの子がくれた力…

あの子が残した力…

それを使って助ける…

大好きな人たちを…







第5回 「お話を聞かせてなんだからっ!!」



学校が終わって一度帰ってからちょっと遠目のスーパーへ。

だって、部屋に行ったらパンケーキがなくなったってリーフがしょんぼりしてるんだもん。

あの子結構たべるんだなぁ。

なんてこと考えながら店内をうろつきお菓子コーナーへ。

二袋くらい買っていけば何日かもつよね…。あ、あったあった。

手を伸ばして取ろうとしたら横から別の手が出てくるのが見えた。

「あれ?はやて?」

「アリサちゃん?」

二人でビックリした顔浮かべたあとはにっこり笑い合う。

後ろにシャマルさんがいたのでペコリとお辞儀をする。

「夕飯の買い物?」

「そや。今日はすき焼きなんよ〜。アリサちゃんはお菓子買いにきたん?」

「う、うん、そうなの。このお菓子おいしいから…」

「ふーん…。それじゃあ、はい!」

と一袋渡される。

「ありがと。ついでにもう一袋とってもらえる?」

「もう一袋?アリサちゃん、食いしん坊やなぁ〜」

はい、と手渡してくれるはやて。

もしかしたら居眠りキャラに食いしん坊が追加されてしまったかもしれない。

「ほら?はやても買うんでしょ?」

とお返しに一袋。

「あはははっ。おおきに〜。ついでにもう一袋お願い出来るやろか?」

「ん〜?はやても?まったく、人のこと言えないじゃない?」

なんてちょっと意地悪な言い方しながら渡す。

「残念。ウチの末っ子さんがこのお菓子好きでな、すぐなくなっちゃうんよ〜」

なるほど。はやての家はヴィータがいるからお菓子の消費が激しいのか。

てか、人気あるのねこのお菓子。

「アリサちゃん、時間ある?ちょっとお話せーへん?」

ん…。めずらしいわね…はやてがこんな風に誘ってくるなんて。

まあ、付き合いもそこまで長いわけでもないから珍しいとかもないかもだけど。

「う〜ん…ちょっとだったら大丈夫よ」

「じゃあとりあえず買い物すませなあかんな」

そう言って笑顔を浮かべるはやて。すると先ほどから私たちのやりとりを黙って見守っていたシャマルさんが声をかけた。

「はやてちゃん、私がお買い物を済ませておきますからアリサちゃんとお話してきて下さい」

「そか?シャマルおおきに。近くの公園で話してるから」

「はい」

はやての後ろにまわり車椅子を押す役をシャマルさんとかわる。

「すまんなー」

ちょっともうしわけなさそうな顔を向けるはやて。

「ほら、いくわよ?」

そんなはやてには笑顔で返す。シャマルさんにそれでは、と一言告げてレジに向かう。

私の買い物はすぐ済むからね。

でも、はやてって関西の人なのかな?

それを確かめようと思ったけどなんとなく聞いちゃ駄目な気がしてやめた。




車椅子をベンチの前に停めた。

私は調度はやての正面の位置になるようにベンチに座った。

「最近どうなん?」

「え?どうってなにが?」

いきなりのことに不意を突かれた。どうって言われてもな…。

「いややわ〜アリサちゃん。”どう”って聞いたら恋愛関係のことしかないやん」

とかいいながら手をひらひらさせるはやて。

近所のおばさんかあんたは…。

「あるわけないでしょ!」

まったく…ちょっと恥ずかしいじゃない…。

無邪気に笑っちゃってまあ…。

「じゃあ別の質問な〜。最近、なにか変わったことない?」

ドキッ。

「な、…ないわよ!なによはやてったら藪から棒に…!」

はやての表情は先ほどと変わらずに笑顔だ。

しかし、その瞳には迷いがないように見える。

「うちは…すずかちゃん達よりもアリサちゃんと付き合いが短いからわからへんことある。だから、なんでも話してほしいんよ?例えそれが、うちに心配かけてしまうことでもな〜」

全てを見透かしたような瞳。

ん…隠し通すのは無理かな。

私もここまで言われちゃったら隠し通そうって気もないし…。

ふぅ。

もしかしたらなのはやフェイトも気付いているのかも。

私が何かに巻き込まれていることに。

「あんたには負けたわ…だけど…っ」

「なのはちゃん達にはいわへんよ……それはアリサちゃんが選ぶことやからね」

なんというか…しっかりしてるなはやては。

「うん…まずどこから話そうか…?」

まずはおじさまのことからはなさないといけないのかな?







「う〜ん、なるほどなぁ」

私はこれまでの出来事をところどころ端折りながらはやてに説明した。

はやてはなにやら腕を組んで考えている。

「アリサちゃんにしか使えへんデバイス…ダイヤモンドハートか……。まあ、うちが考えてもわかることはそんなにあらへんね。とりあえずそのちっこいの…リーフちゃんも悪い子じゃなさそうだし…しばらくはリーフちゃんの言うとおりにしてみたらええんちゃうかな?」

それがはやての結論だった。

まあ、これまでと変わらないってことなんだけど。

「うん、わたしもそう思ってる。それに、あの子の力になりたいし…」

「多分、なんやけどね。ダイヤモンドハートじゃないとダークシードは封印出来ないと思う」

「どういうこと?」

なのは達はPT事件の時にジュエルシードを自分たちのデバイスで封印したはずだ。

なのになぜ、ダークシードを封印出来るのがダイヤモンドハートだけなのだろか。

「う〜ん。詳しく調べてみないとわからんけどほぼ確実だと思うよ」

そうなのか。

まあ、はやてがそういうならそうなのだろう。

一応、はやてが魔法使いとしては先輩だし。

昨日今日に魔法が使えるようになったひよっことは違うってこと。

「それから戦闘のほうな〜。うちの守護騎士達にサポートさせるから、アリサちゃんはダークシードの封印だけに集中してな!」

「えっ…いいの?」

ほとんど無関係なはやての守護騎士達の力を借りるなんてなんだか悪い気がした。

「ええんよ〜。あの子ら結構暇してるから」

「そか、ありがとう」

「どういたしまして〜」

お互い笑い合う。

はやてとは付き合いが短いがなんとなくわかった。

この子もなのはと同じく強い意志を持った子なんだ。

誰よりも堅く、強い想いを…。

「じゃあそろそろいくね。お話、聞かせてくれてありがとうね」

はやてが車椅子を向けた先をみるとシャマルさんがいた。

手には買い物袋が二つ。

私ははやての車椅子を押そうとしたがはやての手に制された。

「ええよ。アリサちゃんははやくあの子のとこに帰らんとあかん…ね?」

そうだった。今頃お腹空かせてるだろう。

「ごめんはやて色々ありがとう…それじゃ!」

シャマルさんにも一礼して私ははやてと逆の方に走り出す。

あ、忘れてた。

公園の出口のところで立ち止まりはやての方を向いた。

「はやてーー!また明日ーーー!!」

そういって大きく手を振る。

はやてはちょっと驚いた風な顔をしていたがすぐにいつもの柔らかい笑顔になった。

「また明日ね〜〜!」

はやてが大きく手を振ったのを見て、私はもう一度我が家に走り出すのだった。



続く

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