第7回 「わたしはわたし 後編」






わたしは地面にぺたんと座り込んだ。

それと同時にジャケットは解除され、もとの私服姿に戻った。

「ふぅ…なんとかなったわね…」

「お疲れ様ですアリサちゃん」

リーフがふわふわと近づいてきてねぎらいの言葉をかける。

「うん。リーフもね。シグナムさんにお礼を言わないと」

ざっざっと砂を歩く足跡が後ろから聞こえた。

シグナムさんだ。

「シグナムさんありがとうございました」

シグナムは腕を組んで目を閉じている。

まるで先生が生徒を説教する前のように…。

「ああ……ところでリーフ…少し聞きたいことがあるんだが?」

鋭い眼光がリーフを捉える。

「……はい、どうぞ」

リーフはシグナムさんに目を合わせずにそう言った。

「さっきのアリサのザンバー…あれはテスタロッサのバルディッシュ

にそっくりだった。どういうことだ?」

「………」

リーフは答えない。

空気が凍るってこういう事をいうのね。

…この間は…つらいな…。

「何を言ってるんですかシグナムさん。アレはわたしがイメージから

でてきたものなんですよ?それがたまたまバルディッシュとかぶって

たからって…」

「では聞くが。お前はどこからそのイメージを得た?」

「え?」

「ただ単に刃と言うだけならダイヤモンドハート本来の杖の姿をくず

すことはなく、魔力の刃を作れたはずだ。しかし、ダイヤモンドハー

トはその姿を大きく変えてザンバーの形を取った…。まるで杖はなの

は、ザンバーはテスタロッサのようにな。お前はイメージを得てそれ

を作った。そのイメージの正体、この子は知っているだろう」

シグナムさんの言わんとしてることはよくわからないけど…。

わたしがイメージを得たのはフェイトの映像からだ。

そのあたりにやはり疑問はある。

「……どういうことなのリーフ?シグナムさんがなにを言いたいのか

わからないけど…たしかにわたしが得たイメージはわたしのどの記憶

にもないフェイトの姿からだった。ねえ、話してくれない?」

リーフは下げていた顔を上げる。

「仕方ありません…お話しましょう。魔法を知る人間が多いこの土地

では…いずれわかってしまうことでしょうから。ここではなんですし

…アリサちゃんの家に戻りましょう。いいですね?」

こくんと頷くシグナムさん。

まあ、魔法ですぐに飛んで帰れるから遠いとか近いとかは気にしなく

てもいいんだよね。



「率直にいいます。わたし…いえ、ダイヤモンドハートはあるデバイ

スのコピーです」

ぽかーん…。

部屋に戻って各々くつろぐ間も無くリーフが切り出した。

コピーっていわれても…。

「高町なのはのレイジングハート…フェイト・テスタロッサのバルデ

ィッシュ。この二つの特性を合わせた物がダイヤモンドハートです」

「じゃあ、わたしが見たビジョンは?」

「それはダイヤモンドハートに入っているバルディッシュのデータで

す。アリサちゃんは”剣”を思い浮かべようとしました。アリサちゃ

んとリンクしているダイヤモンドハートは”剣”という単語から自ら

のデータであるバルディッシュザンバーをアリサちゃんにみせたので

す」

ほう…なるほど。

「なぜそんな面倒なことをする?ダイヤモンドハートがザンバーの形

状をとれるのならすぐに取ればいいだけのこと。わざわざアリサにビ

ジョンを見せる必要はない」

あ、そういえばそうね。

「…シグナムさんはどうしてアリサちゃんが魔法を使えると思います

か?」

「え?」

「……それも疑問だった」

たしかに。

なんで一般人なわたしが魔法を使えるんだろう。

なのはみたいに元々魔力を持ってるから?

「アリサちゃんが魔法を使うにはイメージを浮かべなければいけませ

ん。そのイメージがアリサちゃんからダイヤモンドハートに伝わりダ

イヤモンドハートがそれをみずからの魔力で具現化します。つまり、

アリサちゃんが使う魔法の魔力はダイヤモンドハートに依存して、ダ

イヤモンドハートはアリサちゃんに魔法の形態を依存しているのです



ちょっとよくわからないけど…まあ、いいか。

ようはわたしがいて、ダイヤモンドハートがないと魔法は使えないっ

てことよね。

「もちろん、なんでもかんでもダイヤモンドハートの魔力で出来るわ

けではありません。ダイヤモンドハート自体の魔力要領というのもあ

りますし、なによりダイヤモンドハートにインプットされていない攻

撃、防御以外の魔法は発動出来ません。アリサちゃんが自分で考えた

魔法をインプットすれば話は別ですが…」

「魔力の回復はどうするんだ?」

「それはわたしが行っています」

ん…?もしかして…。

「だからいっぱい食べるの?」

「まあ、…そういうことですね」

ちょっと恥ずかしそうなリーフ。

「なるほどな…だいたいわかった。このことは主はやてに伝えておく

がいいか?」

「構いません。ですが……」

「わかっている。なのはとテスタロッサには黙っておこう」

「…ありがとうございます」

「では…」

そういってシグナムさんは椅子から立ち上がると先ほどの騎士甲冑の

姿になった。

「わたしはそろそろおいとましよう。それではな、アリサ……そして

、リーフ」

そう言ってシグナムさんは夜の闇に消えていった。

「もう…こっちの挨拶くらい聴いておけばいいのに。ところでリーフ

?なんでなのはとフェイトには内緒なの?」

わたしの言葉にう〜んと考え込むリーフ。

「なんとなく、です♪」

明るく笑ったその笑顔はいつもより輝いてる気がした。



続く


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