自分が生まれた理由。

自分がここにいる理由。

自分が…生きている理由。

わからないから……。

わからないから命を壊す。




第8回 「その身に受けし使命」



「ふぁぁ…よく寝た…」

朝の日差しを浴びて気持ちよく起きた。

疲労は特にない。

とりあえず学校にいく準備よね。

「あ、おはようリーフ」

「おはようございます、アリサちゃん」

お馴染みのパンケーキを食べながら本を読むリーフに挨拶する。

「さてと、準備準備〜」

フラフラとクローゼットに行くわたし。

「学校ですか?」

「そーよー」

「もうこんな時間ですよ?」

「何いってんのよリーフ。朝起きたら平日は学校に行かないと」

「だから、もう、朝じゃないんですよ?」

「えーーー?」

なにいってんのよホントに…。

そう思って手に取った時計はなぜか12時40分を指している。

「え!?なんでよ!?」

なんでもうお昼なのよ!

大遅刻どころの騒ぎじゃないわよこれ!!

「やばいやばいやばい〜〜っ!!!」

急いで制服を着てそんでバスに乗って…いや、車のほうがいいわね。

「大丈夫ですよ〜。今日は体調が悪いから休むとお家の方に伝えまし

たから」

「急いでるからあとにして!!!………今なんて?」

「わたしが伝えておいたのでアリサちゃんはゆっくりで大丈夫ですよ

?」

「伝えたって…どうやって?」

「変身魔法でアリサちゃんに変身しました」

「……え?そんなことできるの?」

「まあ、魔法ですから」

魔法って便利なのね。

「連戦で疲れているでしょうし…今日はゆっくり休んでください。こ

れから先…戦いは激しくなるでしょうから」

こくん、とうなづいて意志表示する。

それじゃあお言葉に甘えて休ませてもらおう。

リーフも疲れてるだろうし。

にしても…、学校が休みの日って暇よね。

何をしたらいいかわからないわ。

とりあえず携帯を手にとってメールをチェック。

…1件か。

「どーしたのですか〜〜?」

携帯を手に取ったわたしが気になったのだろう。リーフがふらふら飛

んできて肩に乗る。

「こ、これが携帯電話というデバイスですか……!」

「で、デバイスって…」

リーフの世界には携帯ってないのか…、にしてもデバイスって言うな

よ。

まあ、目をキラキラ輝かせてるリーフにそんなこと言えないけどさ。

わたしはワクワクしてるリーフに構わずメールを開く。

すずかだ。

”アリサちゃん具合はどう?学校が終わったらみんなでお見舞いに行

こうと思ってるんだけど…具合が悪いんだったら迷惑かな?みんなア

リサちゃんに会いたがってます。お返事待ってます。”

「お見舞い……ですかぁ」

「なのは達も来るみたいね。どうする?」

「うーん……、どのみちわたしの存在は彼女達にばれていますし、こ

のあたりでお互い顔合わせをしておいたほうがなにかといいでしょう

し。ただし、あのことは…」

「わかってるわよ。だまってるわ」

やはりリーフは気にしているのだろう。

ダイヤモンドハートがレイジングハートとバルディッシュのコピーだ

ということを。

劣等感…ってやつなのかな。

わたしが以前フェイトに少しだけ抱いてた感情に似てるのかもしれな

い。

「じゃあ”OK”って返信するわね。でも、みんなが来てるときにダ

ークシードが来たら嫌ね…」

「そのときは……」

先ほどまで肩に乗っていたリーフはすでに窓際に立ち外を見ていた。

「戦うだけです」




結局みんながお見舞いに来ている間は、出撃することはなかった。

なのは達にはちょっと疲れた程度に話をしておいた。

少し不自然に思われるかもしれないけど変な心配されるよりはいい。

リーフは楽しそうにテレビを見ているがなのは達と顔を合わせた時は

ぎこちないようだった。

私はすずかが持ってきてくれたノートを自分のノートに写している。

今日のうちに写しとかないとなにかと面倒だしね。

そんな私は面倒なことは先にやってしまう派。

面倒と言えばダークシード……今日はこのままなにもなければいいの

だど。

「アリサちゃん」

「なによリーフ?テレビはいいの?」

「…ダークシードが発動しました」

「どうやらノートよりも先に片づけなければいけないことがあるよう

ね……リーフ?」

リーフはすでに私に背を向け、窓際に立っていた。

「はやくいきましょう…嫌な感じがします」





宙に二つの影が浮いている。

アリサとリーフだ。

「ここは…」

ダークシードが発動した場所、そこはユーノとなのはが出会った場所

であり、アリサがダイヤモンドハートを受け取った場所だった。

だが、静かだ。

いつもはすでにダークシードは暴れているころだろうしかし、今回は

違う。

「……」

いつもより険しい雰囲気をしたリーフにアリサは話かけることが出来

なかった。

(嫌な感じ…か。でも、ここまで来たらちょっとやそっとじゃ驚かな

いわよ)

アリサはいつもと違う状況よりもリーフの言葉が気がかりだった。

「結界がはってあります…どうやらこちらがくるのを待っているよう

ですね」

「けど、行くしかないでしょ?罠でもなんでもさ」

「では…行きましょう」

リーフの声を聞きアリサは杖を強く握った。

(この先なにがあるかも…リーフの嫌な予感がなんなのかもわからな

い。だけど…)

「進むしかないんだから」

アリサとリーフは静かに森の中へ降りていった。




森の中は一本道歩いていくとすぐに開けた場所にでた。

そこに立っていたのは人型をした真っ黒な狼。

人狼(ワーウルフ)と言えばいいだろうか。

伸びた牙と爪はアリサの体など簡単に切り裂いてしまうだろう。

「行くわよ…リーフ!」

アリサは杖の先を人狼に向け魔力を集中した。

「あぁ……やっぱりですか」

「…リー……フ?」

リーフの気の抜けたような声にアリサは振り返った。

その表情は悲しみに満ち、瞳から頬を伝い涙があふれている。

「よくきたな二人とも」

人狼が喋る。

相手が自分を知っている、そして、リーフは相手を見て涙を流してい

る。

アリサは戸惑いを隠せなかったが再度杖を向ける。

「誰よあんた!私たちを知ってるの!?」

アリサは今の自分にだせる精一杯の声を出した。

リーフがこうなってしまった今、何とか出来るのは自分しかいない。

そんな思いから。

「…力は手に入ったか?リーフ、そのお嬢ちゃんならぴったりだろう

?」

「な、なんのことよ!」

「はい、今のアリサちゃんと私なら最後の力を使うことも出来ます」

「リーフ!?こいつを知ってるの…?」

リーフの言葉を聞いてアリサは驚愕した。

この、人では無い物とリーフは顔見知りだということに疑問を隠せず

にはいられなかった。

「はい。アリサちゃんも一度会っていますよ」

「…え?」

もちろんアリサの今までの人生でこのような人ならざる者に会ったこ

とはないだろう。

しかし、それはただ形が違うだけでもしかしたらもとの形から変わっ

てしまっただけなのかもしれない。

「この方は…私の前マスターです」



続く